News Release

クジラの歌は効率に関して人間の音声と顕著な類似性がある

Summary author: Abigail Eisenstadt & Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

Science Advancesに掲載された新しい研究によると、クジラの歌は人間のコミュニケーションと同程度に、場合によってはそれ以上に効率的だという。一方、Scienceに掲載された別の新しい研究では、ザトウクジラの記録にみられるように、クジラの歌が普遍的な言語法則に従っていることについて、さらに踏み込んだ研究を行っている。

 

自然選択では冗長よりも簡潔が好まれる。例えば、「伏せろ!」と叫ぶほうが、「気をつけろ、弾丸が飛んでくるから、その場から離れたほうがいい!」と叫ぶよりも速いうえに、はるかに効率が良い。メンツェラートの法則とジップの法則という短縮に関する2つの言語法則では、こうした発声の効率を算出できる。前者では、長い単語や歌が短い要素(音節や音符など)で構成されている場合に、効率が向上する。後者では、使用頻度の高い要素が短い場合に、効率が向上する。Science Advancesに掲載されたほうの研究では、クジラの歌にメンツェラートの法則とジップの法則の両方を適用し、イルカ、ハクジラ、ヒゲクジラを含む計16種の鯨類について配列を分析している。今回、Mason Youngbloodは6万5511のクジラの歌の配列と51の人間の言語に含まれる構成要素を調べ、まずメンツェラートの法則によって効率を求めた。16種のうち11種の発声は、人間の音声と同等またはそれ以上の程度でメンツェラートの法則に従っていた。例外は、シャチ、セッパリイルカ、イロワケイルカ、コシャチイルカ、セミクジラであった。次にYoungbloodはジップの法則について調べた。ザトウクジラとシロナガスクジラだけがこの法則に従い、唯一ザトウクジラは人間の音声に見られるのと同程度にこの法則に従っていた。

 

Scienceに掲載されたほうの研究では、Inbal Arnonらが、幼児の音声を評価する際によく用いられる定量的手法を利用して、文化的に進化した人間の言語学習能力がザトウクジラの歌にも当てはまることを明らかにした。人間の言語では、構造的に一貫性のあるユニットはべき乗則に従う頻度分布を示す。これはジップ分布としても知られており、学習を容易にし、世代を超えた言語の正確な保存を促進しうる特性である。ザトウクジラの歌は、動物界で最も複雑な音声表現の一つであり、また文化伝達によって受け継がれていることから、人間の言語と非常によく似ているといえる。こうした歌は高度に構造化されており、入れ子になった階層的な要素で構成されている。つまり、音要素がフレーズを形成し、フレーズが繰り返されてテーマになり、テーマが組み合わさって歌になる。人間の言語の統計的特性が文化伝達に起因するならば、クジラの歌にも同様のパターンが検出されるはずである。Arnonらは、幼児からヒントを得た音声セグメンテーション技術を用いて、ザトウクジラの歌を記録した8年分のデータを分析し、クジラの歌の中に人間の言語と驚くほど似た構造が隠されていることを見出した。具体的に言うと、こうした歌には、ジップ分布と一致するような統計的に一貫性のある部分列が含まれていた。さらに、部分列の長さはジップの簡潔性の法則に従っていた。これは効率駆動型の原則であり、人間をはじめとする多くの種にみられる。進化的に遠い2つの種にみられるこの驚くべき類似性は、種を問わずコミュニケーションの形成において学習と文化伝達が重大な役割を果たしていることを裏付けるものであり、前述のような構造的特性は人間の言語にしかないという考えに異議を唱えるものである。関連したPerspectiveではAndrew WhitenとMason Youngbloodが、「知られている限りでは、ザトウクジラの歌と鳥の歌はこれらの法則や原則に従うパターンを示しているが、人間の言語が示すような意味論的意味は伝えていない。そうであれば、クジラの歌を人間の音楽と比較するべきであろう」と述べている。「それでもなお、これらの重要な類似点から浮かび上がるのは、遠縁の種におけるコミュニケーションシステムは類似の構造(特に、複雑で文化的に学習され、効率的な構造)に向かって収束しうるということである。」


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