News Release

シギのオスにおける交尾型の違いの根底にある1つの遺伝子

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

交尾を行うシギのオスは一般的に3グループのうちの1つに分類され、様々な要素の中でもとりわけ攻撃性や羽衣の華やかさにばらつきがある。今回、新しい研究で、シギのオスの型におけるこれらの劇的な違いはある1つの遺伝子 ―― HSD17B2 ―― が生み出していることが報告された。この研究結果は、1つの遺伝子の構造、配列、調節における進化的変化がどのようにして1つの種に大きな多様性をもたらすかを示している。男性ホルモンのテストステロンはオスの生殖発生に重要な役割を果たしている。このホルモンは体の大きさや装飾といった一連の身体的特徴に影響を及ぼし、また、求愛関連行動などの社会的行動にも影響を及ぼす。テトステロン濃度は個体差が非常に大きく、この差異の一部は遺伝的なものと考えられている。しかし、遺伝的変異体がテストステロン濃度や様々な生殖表現型とどう関連しているかを解明するには更なる研究が必要である。Jasmine Lovelandらはエリマキシギ(Calidris pugnax) ―― 海岸に生息する鳥で、オスの身体的特徴と生殖行動に驚きの多様性があることで知られている ―― のテストステロン生成と代謝について調査を行った。シギのオスには3つの異なる交配型がある。「Independent型」のオスは装飾的な羽衣を誇示し、ディスプレイ領域を果敢に守って交尾を誘う。「Satellite型」のオスは装飾に華やかさはなく、攻撃性も低い。優勢な「Independent型」のそばでディスプレイ行動を行って、機を見て敏に交尾する。これらとは対照的に、「Faeder型」のオスは体の大きさも外見もメスに似ており、他の交尾型のオスのような華やかな羽衣は持っていないため、オスからの攻撃を避けてうまく紛れ込み、こっそりと交尾することができる。「Independent型」は血中テストステロン濃度が高く、アンドロステンジオン ―― 作用の弱い男性ホルモン ―― 濃度は低い。非攻撃的な「Satellite型」と「Faeder型」はその逆である。これまでの研究で、これらの型は約100個の遺伝子を含む超遺伝子と関連していることがわかっている。Lovelandらはその超遺伝子内の遺伝子、HSD17B2に着目し、この遺伝子の進化的変化が低テストステロン濃度型のシギにおける高活性酵素の生成増加につながることを発見した。これらの酵素はテストステロンを速やかにアンドロステンジオンに変え、血中テストステロン濃度を下げる。HSD17B2の活動の組織特異性のおかげで、これらの型のシギは、睾丸内の生殖のためのテストステロン濃度は高く維持しながら、その他の部位での作用を制限して、独自の交尾行動と特徴を支援することができる。関係するPerspectiveではKimberly Rosvallが次のように書いている。「Lovelandらの研究結果は、ホルモンが媒介する特徴、若しくはおそらく全ての複雑な特徴にとって新たな「生命のルール」になりうるものを提示している。進化において、問題にはそれぞれ多数の可能な解決策があるものだ。」


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