News Release

油と水を完全に分離するヤヌスチャネル膜の紹介

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

2つの目的を果たすその設計から、2つの顔を持つローマの神ヤヌスにちなんでヤヌスチャネル膜(JCM:Janus channel of membranes)と名づけられた新たな膜システムを研究者らが紹介している。このシステムは複合エマルションから油と水を同時に分離することができ、様々な産業にわたる重要課題である持続可能な水と油の再利用の問題に対処するものである。複雑な混合物から油と水を分離することは、廃水処理や生物学的分取といった多くの科学的応用および工業的応用に不可欠である。これらのプロセスで膜技術は極めて重要な役割を果たす。しかし従来の膜は多くの場合、一度に1つの成分しか除去しないため、それ以上の分離の取り組みは複雑になり、処理における課題が生じている。この限界は、日常生活と産業活動の両方で多く生じる副生成物である ―― そして生態系および水資源に対する最も深刻な脅威の1つとして広く認識されている ―― 油性廃水の処理において特に重大である。いくつかの処理方法によって環境修復と水からの油回収は進歩してきているものの、現在の膜技術は、界面活性剤で安定化したエマルションから油と水を同時に回収することに苦労している。

 

Xin-Yu Guoらが紹介しているヤヌスチャネル膜システムは、対照的な親水性膜と疎水性膜で挟まれて制限された狭いチャネルから成る斬新な設計を特徴とする。複合エマルションがこのチャネルを通って流れると、圧力によって水分子が親水性膜へと向かい水が通り抜けていく一方で、チャネル内には油が濃縮される。油濃度が上昇することで、流体力学的な力で油滴が衝突して合体し、より大きな油滴が形成されて表面エネルギーが低下し、疎水性膜を通り抜けられるようになる。この一連のプロセスによって、濃縮、合一、解乳化のフィードバックループが形成され、従来のシステムで見られる濃度の問題を生じることなく、油と水を同時に高純度で分離できる。Guoらの行った試験において、JCMシステムは油の回収率約71%、水の回収率約94%、そしていずれも純度は99%超という素晴らしい分離性能を示している。さらに、従来の親水性膜が油濃度10%未満のエマルションに限定されるのとは違って、JCMは40%という高い油濃度の水中油型エマルションを処理でき、しかも水回収率50%超、油回収率80%超を達成している。「Guoらのコンセプトは、複雑な混合物から単に油と水を分離できるというだけにとどまらず、大規模産業における他の種類の困難な分離にも適用できる」と、Xing YangとMohammad Hossein Jandaghianは関連するPerspectiveで述べている。「バイオ燃料から水やグリセロールを分離したり、採鉱で生じる選鉱くずから有価金属を分離したり、乳製品からタンパク質やビタミンを分離したりといったことは、ほんの数例にすぎない。」


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