海洋生物の生物学的メカニズムとその多様性を国際連携で追求

この度、沖縄科学技術大学院大学（OIST）とフランス国立科学研究センター（CNRS）は、国際研究ラボ「Eco-Evo-Devo of Coral Reef Fish Life Cycle (日本語仮訳：サンゴ礁魚類生活環における生態進化発生生物学国際研究ラボ、略称：IRL EARLY)」の設立について合意書を取り交わしました。署名は10月7日、京都市で開催されたSTSフォーラムの会場で行われました。

生命は海で誕生し、その後様々な生物に多様化しました。しかし、海洋生物の多様性の大部分は、未だに多くの種とその生態が不明のままです。海洋生物の生物学的メカニズムを調査することは、生物の一生や進化を理解するだけでなく、生物多様性の保全にとっても不可欠です。海洋生物の生物学的メカニズムの多様性を研究することは、医学に役立つ可能性のある新しい分子経路や酵素、生成物を特定することにつながったり、気候変動に直面する生物の回復力を高めることにも役立つでしょう。しかし、これらの複雑なメカニズムを解明しようとする研究者たちが直面する課題は非常に大きく、異なる科学分野間の協力や研究所間の共同作業が必要とされています。

このような理由から、OISTとCNRSは、地球上で最も広大で複雑な海洋領域である西太平洋地域で活動する研究所間の交流と連携を共同で推進します。サンゴ礁に生息する魚類の生態、進化、発生の分野において行っている現状の研究協力および、西太平洋地域における海洋生物学の発展を望む両者の共通の希望を踏まえ、OISTとCNRSは、国際研究ラボを設立することで、関係を構築・強化していくことで合意しました。同ラボは、OISTキャンパスに設置され、ディレクターにはOISTのヴィンセント・ラウデット教授が就任します。

合意書の署名に当たってカリン・マルキデスOIST学長兼理事長は、「海洋生物学という重要な分野における国際的な魅力を高める礎となるものと信じています。OISTは、サンゴ礁の海洋生態系を研究する上で他に類を見ない自然環境に恵まれた、若く機動力のある研究機関です。OISTに設置される IRL EARLY は、日本の海洋生物学の一大拠点となるでしょう。さらに、CNRSとの連携により、OISTはヨーロッパや新興国との研究機会を拡大し、OISTの強みのある分野に即した形で、国際的な研究ネットワークを構築できるものと期待しています。この国際的なネットワークを通じて、持続可能な社会の実現に貢献する研究を推進していくことを楽しみにしています」と述べました。

CNRSのアントワーヌ・プティ理事長は、「この協定を締結できることを大変嬉しく思います。気候変動や生物多様性の喪失など、国際的なレベルで取り組むべきあらゆる問題に対処するには、国際的な協力が不可欠だからです。OISTとCNRSの活動は明らかに補完的な関係にあります。このため、IRL EARLYは、お互いの交流や共同研究プロジェクトをさらに活性化させるでしょう。そして、これは両機関の歴史において非常に意義深い出来事の始まりであると確信しています」と述べています。

署名時の写真はこちらからもご覧いただけます。

本プログラムの一部は文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業（J-PEAKS）」の支援を受けて実施しています。

フランス国立科学研究センター (CNRS)について

CNRSは職員数33,000人以上、10の研究所と、フランス国内外に1,100の研究ラボを持つ、フランス最大の国立の基礎研究機関であり、国際的にも最大規模の公的研究機関。学際的なアプローチをとり、数学、物理、化学、生物学、情報科学などから、人文社会科学まで、あらゆる分野の基礎研究が行われている。

国際研究ラボ（IRL）について

CNRSが国外のパートナー機関において設置している研究ラボで、世界中に80に上るIRLがある。OISTにおけるIRL EARLYは、日本国内で12番目のIRLとなる。

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