News Release

着床を促進するプロスタグランジン受容体の発見

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

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In the early stage of implantation (Day 4.5), DP, EP2, and EP4 receptors are expressed in the luminal epithelium (LE), contributing to epithelial breakdown through the actions of PGD2 and PGE2, produced by COX-2. By the later stage (Day 5.5), DP and EP4 receptors are found in the mesometrial and anti-mesometrial stroma, respectively, promoting decidualization in cooperation with PGD2 and PGE2.

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Credit: Yukihiko Sugimoto, Tomoaki Inazumi, Kumamoto University

[背景]
 着床は、胚が子宮に結合して内部に浸潤する現象で、妊娠の起始点です。

 胚と子宮はそれぞれ適切な時期に相互作用することで、初めて胚の成長が促され、その支持組織が形成されます。例えば、胚が接着して子宮内部に取込まれると、これを起点として脱落膜化が起こり、妊娠が成立します。実際、脱落膜化に不具合があると不妊に陥るのですが、その詳細なメカニズムは不明でした。したがって、不妊治療の観点から、脱落膜化の分子機構の早期解明が待ち望まれてきました。これまで、着床にはPG産生酵素COX-2が中心的な役割を果たすこと、COX-2により産生されるPG様生理活性脂質が着床や脱落膜化を促進することが知られていましたが、その作用を仲介するPG受容体の種類は不明でした。

[研究の内容]
 本研究では、子宮の脱落膜化には間質細胞でのcAMPシグナルが重要な役割を担う点に注目し、cAMP産生系に共役するPG受容体、DP、EP2、EP4に焦点を当て発現部位を解析したところ、着床期の管腔上皮にDP受容体がEP2受容体やEP4受容体とともに発現することを発見しました。さらに、DP受容体は着床刺激で血管側の間質細胞に発現誘導され、この時、反血管側の間質細胞にはEP4受容体が発現していました。研究グループは、着床後にPG産生酵素COX阻害剤を投与すると脱落膜化が障害されることを利用し、各受容体作動薬の効果を調べたところ、DPまたはEP4 作動薬は脱落膜化を回復させ、 EP2 作動薬は無効でした。 さらに研究グループは、 EP2/DP 二重欠損 (EP2/DPKO)マウスを作製してその着床受容能を調べましたが、異常を示しませんでした。そこで、本KOマウスにEP4遮断薬を投与したところ、脱落膜化が顕著に阻害されました。以上の結果は、子宮では着床後にPGD2-DP受容体とPGE2-EP4受容体の経路が活性化することで脱落膜化を促し、両経路は互いに機能を補完して着床プロセス遂行に寄与することを強く示唆するものです。

[成果]
 本研究は、胚が子宮に接着(着床)して脱落膜化が起こる分子機構に関する新たな学術的理解を与えるとともに、命を育むために複数のPG受容体が互いに機能を補完して着床プロセスを実現していることを解明したものです。

[展開]
 PG受容体はヒト子宮においても同様に機能している可能性が高く、DPやEP4の受容体作動薬でPGの働きを強めれば、不妊治療で問題となる着床不全の予防・治療に繋がることが期待されます。


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