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気候政策1,500件の分析から、大幅なCO2排出削減を達成したのはごくわずかであることが判明

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

械学習を用いた新たな分析から、この20年間に世界中で実施された1,500の気候政策のうちでどれが最も効果的であったのかが示されている。成功したシナリオの一部は、数にして60以上あるが、その中にほとんど研究されていない政策や、十分評価されていない政策の組み合わせが含まれている。「我々の結果は、2023年までに達成すべき二酸化炭素(CO2)排出量削減に残された230億トンというギャップを解決するために必要な政策の取り組みに関して、明確だが酔いの醒めるような視点を提供している」と、著者らは記している。パリ協定の気候目標を達成するには、どの気候政策が十分効果的な結果をもたらすのかを知ることが重要である。しかし、この20年間に世界中で何千もの気候政策が実施されているにもかかわらず、どの政策が最も効果的なのかについて意見の一致はほとんど得られていない。このことから、世界規模で詳細なアセスメントを行う必要性が強調される。今回Annika Stechemesserらは、1998~2022年に41ヵ国で実施された1,500件の気候政策を評価して得られた洞察を提供している。この研究には、経済協力開発機構(OECD)の気候政策データベースのデータが用いられた。また、標準的な差分の差分法(DID)を機械学習ベースで拡張したアプローチが用いられた。DIDは、ある介入(この場合は気候政策)が原因として及ぼす作用を推定するために用いられる統計手法で、介入に曝露されたグループと曝露されていないグループの間に認められるアウトカムの経時的な変化を比較するものである。

 

Stechemesserらは、各政策が様々な地域と期間において排出量におよぼす影響を評価した。著者らは1,500件の気候政策のうち、63件の政策介入のみが総CO2排出量を6億~18億トン削減したことを見出した。この結果によれば、多様な政策ツールを組み合わせると、多くの場合、ポリシーミックスは内容の重複が問題となる可能性があるとの主張に反して、単一の方策を用いた場合よりも効果的である。効果的な政策には通常、様々な市場の失敗に取り組むための補助金と規制の組み合わせが含まれる。産業部門や電力部門では価格決定メカニズムが効果的であるのに対して、建築部門や輸送部門ではインセンティブと規制の組み合わせが功を奏する。発展途上国では、価格決定は効果が低く、このことから最初は規制と補助金を組み合わせた方策が必要であることが示される。成功を収める政策の規模を拡大すれば排出量のギャップを解決できる可能性があるが、それには、さらなる研究と質の高いデータの必要性を含めて、大幅な追加の取り組みが必要となろう。


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