世界230ヵ所の漁場の調査によると、漁業評価モデルは世界の漁場の持続可能性を過大評価しており、乱獲された多数の種の個体数は報告されているよりはるかに悪い状況にあるという。この調査結果から、より一層慎重な漁場管理戦略が必要であることが浮き彫りになった。漁業の持続可能性を確保するには、魚類個体群の繁殖能力を超えないように漁獲量制限を管理しなければならない。また、枯渇資源を回復させる必要もある。漁場管理の基盤となっているのは、魚の生態、捕獲歴、管理制御に関連する広範なデータをまとめる複雑な資源評価モデルである。これらのモデルは多数の様々な媒介変数を導入することがありうるため、過剰適合する傾向があり、よってその推定値の不確実性は高くなる。これらの複雑なモデルとの比較で単純な方法が検証されることも多いが、実際の魚類生物量は評価が難しいうえに、直接観測されることもほぼないため、そういったモデルの真の精度は依然としてわかっていない。そのような訳で、国連の食糧農業機関(FAO) ―― 漁場の持続可能性の評価と確保を任務とする国際機関 ―― による評価といった世界の漁場評価は、実際の資源減少を把握できないモデルによる推定であるため、事実が歪んでいる可能性がある。
資源生物量推定の精度を評価するために、Graham Edgarらは、世界最大の漁場230ヵ所に関する公開データの分析を行った。彼らは、過去の資源評価の際に漁場管理者に報告された資源量と、包括的な最新データを使って再予報モデルで更新した同じ年の推定値を比較した。その結果、資源生物量の推定値、特に乱獲された資源において、かなりの偏りがあることが判明した。当初の評価では資源量の過大評価が多く、結果として、どれほど深刻な資源枯渇が起こっているかが過小評価されていた。Edgarらによると、現在認識されているより85%多い資源が過去の最大生物量の10%以下に減少している可能性があるという。この偏りは枯渇限界値付近で最も顕著で、そういった場所では漁獲圧力の軽減が求められていた。関係するPerspectiveではRainer FroeseとDaniel Paulyが、「Edgarらの研究結果は、資源量推定における系統的バイアスがいかに、繁殖力のある魚類個体群を維持するには不十分な管理アドバイスにつながってしまうかを明示している」と書いている。「効果的な漁場管理のバックボーンとなる資源評価モデルの精度向上には、様々な面における取り組みが必要である。」
Journal
Science
Article Title
Stock assessment models overstate sustainability of the world’s fisheries
Article Publication Date
23-Aug-2024