地球型生命に必須な元素の一つであるリンが、太陽系が誕生する前の時期に多かったタイプの新星爆発から生み出された可能性が、指摘されました。地球での生命誕生の謎を解く鍵となることが期待されます。
ビッグバン直後の宇宙に存在する元素は、原子量が小さな水素とヘリウムだけでした。その後、恒星の内部で起こる核融合反応や、重い恒星が引き起こす超新星爆発といった激しい現象で合成された原子量の大きな元素が、宇宙にまき散らされました。それらの元素が惑星を作る材料になり、さらにはそこで誕生する生命の材料となったのです。地球型生命に欠かせない必須元素の一つに、DNAやRNAにも含まれる重要な元素「リン」があります。ただ、太陽系内に存在するリンの量を、超新星爆発による合成量だけで説明するのは難しく、どのようにしてリンが生成されるのかは明らかになっていませんでした。
西オーストラリア大学と国立天文台の研究者から成る研究チームは、この問題の解決の糸口を見いだしました。研究チームは、恒星進化の最終段階で残される白色矮星(わいせい)の表面で起こる核爆発である「新星爆発」に注目したのです。その中でも、重い白色矮星で起こる新星爆発は、軽い白色矮星での新星爆発や重い星の超新星爆発と比べて、桁違いに大量のリンを生み出すことを発見しました。
研究チームはさらに、元素の存在量の変化を再現するモデルを作成しました。このモデルから、他の元素に対してリンが存在する量の比率が、およそ80億年前の宇宙で最も高かったことに、「重い新星」が大きく寄与していたことが分かりました。これより前は重い星の超新星爆発が、これより後は別の種類の超新星爆発の寄与が大きかったこと、さらに同じ時期に重い新星が発生する頻度が低くなったことから、リンの比率は80億年前の宇宙でピークになったのです。リンの比率の変化の履歴は、これまでも観測的に指摘されてきましたが、今回研究チームが提案したモデルは、世界で初めてこの履歴を見事に再現したのです。
リンの量の時間変化を再現する今回のモデルは、地球での生命誕生の謎を解く鍵としての知見の一つになることが期待されます。研究チームは、他の元素の存在量の時間変化もこのモデルで再現できるかどうかを検証し、モデルの正当性をより高めていくことを計画しています。
Journal
The Astrophysical Journal Letters
Method of Research
Observational study
Subject of Research
Not applicable
Article Title
Phosphorus Enhancement by ONe Novae in the Galaxy
Article Publication Date
10-May-2024