News Release

紫外線の「風」がオリオン大星雲内にある若い恒星の原始惑星系円盤を侵食する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、近傍にある大質量星から吹く紫外線の「風」が、若い恒星の原始惑星系円盤からガスをはぎ取り、急速に質量を減少させているという。この研究では、遠紫外線(FUV)による原始惑星系円盤の光蒸発について、初となる直接観測の証拠を報告している。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測結果を用いた今回の研究成果は、太陽系などにおける巨大ガス惑星形成の制約について新たな知見を提供するものである。若い低質量星は、塵やガスからなる比較的寿命の短い原始惑星系円盤に囲まれていることが多く、これが惑星形成の原料となる。そのため、巨大ガス惑星の形成は、原始惑星系円盤から質量が取り除かれる現象(光蒸発など)によって制約を受ける。光蒸発とは、X線や紫外線の光子によって原始惑星系円盤の上層が加熱され、ガスの温度が上昇して系外に散逸する現象である。ほとんどの低質量星は大質量星も含まれる星団内に形成されるため、原始惑星系円盤は外部放射にさらされ、紫外線による光蒸発を起こすと考えられている。複数の理論モデルでは、遠紫外線放射によって光解離領域(PDR)が生じ、そこでは近傍の大質量星から放出される紫外線の光子が、原始惑星系円盤の表面にあるガスの化学反応に大きな影響を及ぼすと予測されている。しかし、こうした現象を直接観測することは困難であった。Olivier Bernéらは、JWSTとアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(アルマ望遠鏡)でそれぞれ得られた近赤外線とサブミリ波による測定値を用いて、FUVを浴びたオリオン大星雲内の原始惑星系円盤「d203-506」を観測し、その結果を報告している。PDR内で検出された輝線の運動学と励起をモデル化することにより、Bernéらは、d203-506がFUVによる加熱と電離によって急速に質量を失いつつあることを見出した。その研究結果によると、このままの速度でd203-506から質量が失われていけば、100万年以内に円盤のガスは取り除かれ、系内で巨大ガス惑星を形成する能力が抑制されてしまうという。「太陽系の力学と組成に関する研究では、太陽系が1つあるいは複数の大質量星を含む星団内で形成されたことが示されている。したがって、太陽系はFUV放射の影響を受けた可能性がある」とBernéらは述べている。


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.