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ホッキョクグマの毛皮に着想を得た繊維が、セーターの形で試験され格別な断熱性を示す

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

ホッキョクグマの毛皮の構造に着想を得て、研究者らが熱的および機械的に非常に優れた性質を持つ、編むことのできるエアロゲル繊維を発表した。この繊維は、洗濯も染色も可能で、耐久性があり、高機能の繊維製品への使用によく適している。研究者らがこの繊維をセーターの形で試験したところ、さまざまな特性のなかでも、特に素晴らしい断熱性が示された。エアロゲルは、断熱に理想的な素材である。多孔性が高く、熱伝導率が極めて低い。しかし、エアロゲルは脆く加工しにくいため、断熱性の高い繊維として繊維製品に適用するには限界があった。織ったり編んだりして実用的な繊維製品にするために必要な強度や伸縮性がないだけでなく、現在のエアロゲル繊維は洗濯機で洗うことができず、濡れた状態や高湿度の環境では断熱性能をすぐに失う。極寒環境に生息する多くの動物は、自らを温かく乾いた状態に保つことに特殊化した毛皮を進化させてきた。たとえば、ホッキョクグマの毛は、多孔性のコアとそれを囲む緻密なシェル構造で構成されている。その結果、ホッキョクグマの毛は強度と柔軟性を維持しながら、抜群の断熱性を備える。Mingrui Wuらは、ホッキョクグマの毛のコアシェル構造を模倣し、フリーズスピニング手法を用いて、層状の細孔構造を持つ丈夫なポリマーエアロゲル繊維を作製した。次にWuらは、これを伸縮性のある薄いゴム層で被覆した。こうしてできた被覆エアロゲル繊維(EAF:encapsulated aerogel fiber)は、優れた断熱性能を達成しながら機械的にも丈夫であり、編物や織物にも適している。Wuらは、この繊維は内部の空隙率が高い(90%超)にもかかわらず、1000%ひずみまで伸張可能であることを示している。これは、約2%のひずみしか達成しない従来のエアロゲル繊維に比べて著しい改善だ。この繊維の断熱性は、100%ひずみで伸縮サイクルを10,000回繰り返した後でも、ごくわずかな影響しか受けず維持された。さらに著者らは、このEAFは洗濯も染色も可能であることを示している。概念実証としてWuらがこの繊維を織って薄いセーターを作ったところ、ダウンジャケットと比べて厚さは約5分の1であったにもかかわらず、断熱性能は同等であった。関連するPerspectiveではZhizhi ShengとXuetong Zhangが、この研究について詳細に論じている。


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