約200年間という長期にわたり科学者を悩ませてきた「ドロマイト問題」に取り組んだ研究者らは、ドロマイト結晶の成長には過飽和と不飽和を繰り返す必要があることを報告している。この研究成果は、ドロマイトがどのように形成されるのか、そしてなぜ現在ではドロマイトが主にpHや塩分濃度が変動する自然環境で見つかるのかについて、新たな手掛かりとなるものである。ドロマイト(炭酸カルシウムマグネシウム)は炭酸塩岩に含まれる主要な鉱物の1つであり、地殻の堆積性炭酸塩鉱物の30%近くを占めている。しかし、ドロマイトは地球上には豊富に存在するにもかかわらず、実験室条件下では容易に成長しないため、この鉱物の研究は進んでいない。2世紀にわたり、周囲条件に近い実験室でドロマイトを沈殿させる科学的努力がなされてきたが、成功したことはなかった。自然界ではドロマイトが大量に堆積しているのに、周囲条件下では過飽和溶液中でも成長できないという明らかな矛盾がある。これがいわゆる「ドロマイト問題」である。今回、ドロマイトの原子シミュレーションを行ったJoonsoo Kimらは、この問題に情報を提供するような発見をした。Kimらは、密度関数理論と動的モンテカルロ法による結晶成長シミュレーションを用いて、実験室でドロマイト結晶の成長を促進するには過飽和と不飽和を繰り返す必要があることを示した。シミュレーションの予測によると、溶液が過飽和と不飽和の状態を頻繁に繰り返すと、ドロマイトの成長が最大1000万倍加速される可能性があるという。これは、地表で大量のドロマイトを生成する際に、最も重要な過程だと考えられる。著者らは、透過型電子顕微鏡を使用して、変動する飽和条件下において大きなドロマイト結晶が成長する様子をその場で観察し、その予測が正しいことを実証した。関連するPerspectiveではJuan Manuel García-Ruizが、「Kimらの研究成果は、地質学的時間スケールにおいて自然界では地球化学的変動がどのように起こるのか、またその過程にどのような要素が影響するのかについて、多くの疑問を提起するものである」と述べている。
Journal
Science
Article Title
Dissolution enables dolomite crystal growth near ambient conditions
Article Publication Date
24-Nov-2023