アルマ望遠鏡で、パラボラアンテナ間の距離が最長となる配置と最高の観測周波数を用いた試験観測に成功し、年老いた星からガスが流れ出す様子が、これまでで最も高い解像度で捉えられました。この解像度を活用すると、地球軌道の大きさまで分解できる原始惑星系の個数は飛躍的に増えます。
アルマ望遠鏡は、66台の電波望遠鏡で構成される電波干渉計です。干渉計では、望遠鏡の配置が広いほど、また観測周波数が高いほど、得られる解像度は高くなります。アルマ望遠鏡では、望遠鏡どうしの間を最大で16キロメートルまで離すことができます。また最も高い観測周波数帯は、バンド10と呼ばれる787-950ギガヘルツです。しかしこの配置および周波数での観測は、気象条件や観測誤差の補正がたいへん困難で、これまで実現していませんでした。
チリの合同アルマ観測所、国立天文台、米国国立電波天文台、欧州南天天文台の天文学者を中心とした最適化・性能拡張チームは、観測誤差の補正のための較正(こうせい)天体と観測目標の天体とを別のバンドで交互に観測する「バンド・トゥ・バンド観測誤差補正法(B2B法)」という手法で、最高解像度での観測に挑みました。B2B法は、1990年代に国立天文台野辺山宇宙電波観測所で開発を開始したもので、アルマ望遠鏡でも活用できるように実装されてきました。チームは、目標天体と較正天体の観測を素早く切り替えるなどのさまざまな最適化を進め、応用試験を繰り返してきました。そして今回、年老いた恒星「うさぎ座R星」の電波画像を5ミリ秒角の解像度で得ることに成功したのです。
今回の試験観測では、恒星からガスが流れ出し、リング状の構造を作り出している姿が明瞭に捉えられました。このような高解像度の観測が要求されるのが、惑星系の誕生の現場です。地球軌道の大きさまで見分けられる原始惑星系は、従来の解像度では5天体ほどに限られていました。ところが5ミリ秒角まで見分けられるようになると、その数は数百天体にまで飛躍的に増加します。原始惑星系円盤を高い解像度で多数観測することで、惑星系の多様性の起源の理解につながると期待されます。
Journal
The Astrophysical Journal
Method of Research
Observational study
Subject of Research
Not applicable
Article Title
ALMA High-frequency Long Baseline Campaign in 2021: Highest Angular Resolution Submillimeter Wave Images for the Carbon-rich Star R Lep
Article Publication Date
15-Nov-2023