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北米東部の森林では、周期ゼミの出現によって食物網が分断され、植物への被害が増加する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

2021年に大量発生した周期ゼミ「ブルードX」の影響を定量化した研究によると、北米東部の森林でセミが周期的に大量発生することによって、森林における食物網の「配線」が替わり、食物連鎖を通して生態学的影響が連鎖的に広がっていく可能性があるという。食虫性の鳥は、セミという獲物が豊富にあるときは、普段の食事(木の葉を食べる毛虫)に見向きもしなくなるため、毛虫がオークの若木の葉を普段より多く食べることになり、毛虫による葉の食害が2倍に増えることが、この研究によって明らかになった。「これまでの研究では、パルス的に急増した資源そのものを消費することで、生態学的に大きな影響があることが実証されてきた」が、「我々の研究結果は、パルスの最中に捕食を免れた生物による、付加的な影響を考慮する必要性を浮き彫りにするものである」と著者らは述べている。13~17年に一度、北米東部の森林の土壌から数十億匹のセミが一斉に現れる。米国東部で発生する周期ゼミは、自然界で最大かつ最も劇的な生物量パルスのひとつであるが、こうした事象の生態学的影響は完全には理解されていない。周期ゼミが栄養動態に及ぼす影響について理解を深めるために、Zoe Getman-Pickeringらは、2021年の大量発生中に鳥の採餌を野外観察するとともに、発生前・発生中・発生後の数年間に木について実験を行うことで、2021年に大量発生した周期ゼミ「ブルードX」の影響を定量化した。Getman-Pickeringらの報告によると、この大量発生によって鳥の捕食が地域全体で変化し、研究対象地域全体で82種の鳥が日和見的に採餌スタイルを変化させ、新たに出現したセミを食べるようになったという。この変化により、例年なら食虫性の鳥はオークの葉を食べる毛虫を大量に捕食するのだが、この年の捕食量は測定可能なほど減少した。研究結果によると、大量発生中、捕食されることが減ったせいで、オークの若木では毛虫の密度と食害率がともに2倍になったという。総合すると、今回の研究結果によって、セミが大量発生して鳥の採餌スタイルが変化した結果、複数の栄養段階に連鎖的な影響が及び、植物の被害が増大したことが実証された。関連するPerspectiveではJohn Parkerが、「一般に、昆虫の大量発生や異常気象(熱波など)といったパルス事象は、繰り返されるストレスに対する生態系の反応を明らかにできるため、学ぶことの多い有用な機会である」と述べている。


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