銀河中心の超巨大ブラックホールから噴き出すジェットが作り出す分子ガスの流れ(アウトフロー)を、アルマ望遠鏡を用いた観測で発見しました。また銀河の中心付近では、ジェットの激しい作用によって、星の材料となる分子が破壊されていることも分かり、新たな星の誕生が抑制されている可能性があることも明らかになりました。
銀河の中心にある超巨大ブラックホールの中でも、周囲から吸い込んだガスを膨大なエネルギーとして放射するものは活動銀河核と呼ばれ、宇宙に多数存在することが知られています。ブラックホールの活動が、周囲の星間物質、特にガス分子の分布や組成に及ぼす影響を知ることは、銀河の進化の過程を理解する上で重要です。しかし活動銀河核の場合は、中心部が濃いガスや塵(ちり)に埋もれていることが多く、可視光線や赤外線での観測が困難です。また電波による観測も、これまでは解像度が足りず、分子ガスの分布や銀河核の中心付近の構造までは分かりませんでした。
国立天文台や名古屋大学の研究者を中心とする国際研究チームは、活動銀河核が存在することで知られる渦巻(うずまき)銀河M77の中心領域を、アルマ望遠鏡を用いて観測しました。M77は地球からの距離が5140万光年と比較的近いことから、活動銀河核の状態を詳しく調べるのに適しています。高い解像度を持つアルマ望遠鏡で観測した結果、銀河核を取り囲む小さな円盤と、その外側にあり爆発的に星が作られているリング状のガス雲とを明確に見分けることに成功しました。特に銀河核を取り囲む円盤については、その内部構造まではっきりと捉えることができたのです。
さらに詳しい解析から、この円盤とリング状のガス雲とでは、分子の組成が異なることが分かりました。円盤部では超巨大ブラックホールが作り出す衝撃波によって、分子ガスが高温に加熱されています。この円盤の画像では、左上と右下の2つの方向に向かって伸びる構造が見られます。この見かけの方向が、先行研究で明らかにされている超巨大ブラックホールから噴き出す双極のジェットの向きと一致していることから、双極のアウトフローを捉えたものと考えられます。ジェットやアウトフローが周囲のガスと衝突して作り出された衝撃波は、分子の組成に影響を及ぼします。アウトフロー部では、一般的な銀河でよく見られるような基本的な分子は破壊されていて少なく、逆に特殊な分子が増えていることが分かりました。これらのことから、円盤は超巨大ブラックホールから噴き出すジェットやアウトフローから強い影響を受けていること、そしてその影響は円盤からはるかに離れた外側の領域にまで広がっていることが、明らかになりました。
本研究では、M77銀河の中心付近では、銀河の骨格である星を作る材料の分子が破壊されていることが分かりました。そのため、新たな星の誕生が抑制されていると考えられます。銀河の中心にある超巨大ブラックホールは、その母体となる銀河で、新たな星の誕生、つまり銀河の成長を妨げている可能性があることを、化学的な観点から示した初の観測例となりました。
銀河中心の超巨大ブラックホールから噴き出すジェットが作り出す分子ガスの流れ(アウトフロー)を、アルマ望遠鏡を用いた観測で発見しました。また銀河の中心付近では、ジェットの激しい作用によって、星の材料となる分子が破壊されていることも分かり、新たな星の誕生が抑制されている可能性があることも明らかになりました。
銀河の中心にある超巨大ブラックホールの中でも、周囲から吸い込んだガスを膨大なエネルギーとして放射するものは活動銀河核と呼ばれ、宇宙に多数存在することが知られています。ブラックホールの活動が、周囲の星間物質、特にガス分子の分布や組成に及ぼす影響を知ることは、銀河の進化の過程を理解する上で重要です。しかし活動銀河核の場合は、中心部が濃いガスや塵(ちり)に埋もれていることが多く、可視光線や赤外線での観測が困難です。また電波による観測も、これまでは解像度が足りず、分子ガスの分布や銀河核の中心付近の構造までは分かりませんでした。
国立天文台や名古屋大学の研究者を中心とする国際研究チームは、活動銀河核が存在することで知られる渦巻(うずまき)銀河M77の中心領域を、アルマ望遠鏡を用いて観測しました。M77は地球からの距離が5140万光年と比較的近いことから、活動銀河核の状態を詳しく調べるのに適しています。高い解像度を持つアルマ望遠鏡で観測した結果、銀河核を取り囲む小さな円盤と、その外側にあり爆発的に星が作られているリング状のガス雲とを明確に見分けることに成功しました。特に銀河核を取り囲む円盤については、その内部構造まではっきりと捉えることができたのです。
さらに詳しい解析から、この円盤とリング状のガス雲とでは、分子の組成が異なることが分かりました。円盤部では超巨大ブラックホールが作り出す衝撃波によって、分子ガスが高温に加熱されています。この円盤の画像では、左上と右下の2つの方向に向かって伸びる構造が見られます。この見かけの方向が、先行研究で明らかにされている超巨大ブラックホールから噴き出す双極のジェットの向きと一致していることから、双極のアウトフローを捉えたものと考えられます。ジェットやアウトフローが周囲のガスと衝突して作り出された衝撃波は、分子の組成に影響を及ぼします。アウトフロー部では、一般的な銀河でよく見られるような基本的な分子は破壊されていて少なく、逆に特殊な分子が増えていることが分かりました。これらのことから、円盤は超巨大ブラックホールから噴き出すジェットやアウトフローから強い影響を受けていること、そしてその影響は円盤からはるかに離れた外側の領域にまで広がっていることが、明らかになりました。
本研究では、M77銀河の中心付近では、銀河の骨格である星を作る材料の分子が破壊されていることが分かりました。そのため、新たな星の誕生が抑制されていると考えられます。銀河の中心にある超巨大ブラックホールは、その母体となる銀河で、新たな星の誕生、つまり銀河の成長を妨げている可能性があることを、化学的な観点から示した初の観測例となりました。
Journal
The Astrophysical Journal
Method of Research
Observational study
Subject of Research
Not applicable
Article Title
Molecular Abundance of the Circumnuclear Region Surrounding an Active Galactic Nucleus in NGC 1068 Based on an Imaging Line Survey in the 3 mm Band with ALMA
Article Publication Date
14-Sep-2023