News Release 

成人慢性腎臓病患者に潜在する希少疾患ネフロン癆の臨床像を解明

Tokyo Medical and Dental University

Research News

 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野の蘇原映誠准教授と藤丸拓也非常勤講師らの研究グループは、筑波大学腎・血管病理学教室を始めとする日本全国の施設との共同研究で、腎生検にてネフロン癆が疑われた患者を対象に遺伝子解析を行い、世界で初めて成人におけるネフロン癆の臨床的特徴を明らかにしました。この研究は文部科学省科学研究費補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、公益法人ソルトサイエンス研究財団、公益財団法人石橋由紀子記念基金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌 Kidney International Reportsに、2021年3月3日、オンライン版で発表されます。

【研究の背景】

 ネフロン癆は小児期に末期腎不全に至る遺伝性疾患で、小児慢性特定疾病の1つです。従来は小児の病気と考えられていたものの、遺伝子を見ると成人で末期腎不全になった患者5606名の約0.5%にネフロン癆が潜在していたことが欧州の国際共同研究で指摘されました。しかも、そのうち9割の成人症例は正しくネフロン癆と診断されておらず、その原因の一つは成人ネフロン癆の臨床像やその特徴が不明であることでした。ネフロン癆は成人の場合、小児と異なり腎外合併症が少なく、腎生検にて初めて疑われることが多くあります。しかし、ネフロン癆の病理所見とされる尿細管拡張や間質の線維化は成人では他の疾患でも認められます。そのため、腎生検だけでは鑑別が難しいことから、成人患者における実態や臨床像は明らかにされていませんでした。さらに、本邦における成人ネフロン癆の現状は不明でした。本研究グループはネフロン癆原因遺伝子を含む、遺伝性腎疾患の網羅的遺伝解析技術を開発し、日本全国でネフロン癆など遺伝性腎疾患が疑われた患者を対象に網羅的遺伝子解析を行ってきました。

【研究成果の概要】  

本研究は、全国の様々な施設の協力のもと、腎生検にてネフロン癆の可能性があると疑われ研究参加に同意が得られた18名の成人患者を対象に次世代シーケンサーを用いて網羅的な遺伝子解析を行いました。その結果、7名はネフロン癆と遺伝学的に確定診断されました。従来、臨床情報だけでは診断困難であった成人ネフロン癆患者の特徴を明らかにするために、ネフロン癆の遺伝子変異を認めた患者と認めなかった患者を比較すると、ネフロン癆と診断された患者は腎生検時の年齢が有意に低く、腎生検組織では、従来の小児ネフロン癆に特徴的とされていた所見は有用ではなく、ネフロン癆成人患者には尿細管の基底膜に厚い二重化を認めました。

【研究成果の意義】  

本研究は、腎生検にてネフロン癆が疑われた患者を対象に遺伝子解析を行い、成人におけるネフロン癆の臨床像を明らかにしました。これらの結果は、日本でも原因不明な慢性腎臓病成人患者ではネフロン癆を疑う重要性を明らかにしたと同時に、新たに発見された臨床的および病理学的所見は成人ネフロン癆の診断の一助となり、今後の慢性腎臓病診療に繋がることが期待されます。

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