Public Release: 

切り紙がエレクトロニクス技術を変える

切り紙構造による超伸縮性バイオプローブデバイス

Toyohashi University of Technology

豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系とエレクトロニクス先端融合研究所の研究チームは、切り紙構造を用いた超伸縮性神経電極を開発しました。切り紙神経電極は、複雑な三次元形状を持ち、また、大きな変形を示す心臓や脳組織などの生体サンプルに対して、その変形に沿って伸縮することを可能とします。加えて、伸縮に必要な力を低減できる特徴は、生体サンプルに対するデバイスの圧迫を抑えて、これまでにない低侵襲な生体信号の計測を可能とします。本研究成果はドイツの科学誌Advanced Healthcare Materialsに12月8日付けで掲載されました。

 デバイスの高い伸縮性と高い変形性は、これまでのセンサやアクチュエータ、エナジーハーベスタといったエレクトロニクスの応用をさらに拡大することが期待されます。特に、三次元的な形状を持ち、速くて大きな変形を示す臓器(例えば心臓)や組織といった各種の生体サンプルへの応用が期待されます。しかし、ゴムのような弾性材料を基にした従来の伸縮性デバイス(ストレッチャブルデバイス)では材料自体の特性によってデバイスの伸縮時に大きな力が必要でした。そのため、従来のストレッチャブルデバイスは、柔らかい生体サンプルに対して追従することはできず、また、生体の自由な変形や成長を阻害する可能性もありました。柔らかい生体組織へのストレッチャブルデバイスの応用には、デバイスの低侵襲性や安全な計測を実現する上で伸縮に必要な力を最小限に抑えることが重要な課題でありました。

そこで、豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系とエレクトロニクス先端融合研究所の研究チームは切り紙構造を用いて超伸縮性を実現したバイオプローブ(神経電極)デバイスを開発しました。

 「微小な応力で伸縮可能な伸縮性神経電極を実現するために、我々は切り紙構造をデバイスの基盤として使いました。切り紙構造の驚くべき特徴は、硬く、伸縮性を持たない材料に対しても切り紙構造を適用することで、他の弾性材料を用いるより、むしろ高い伸縮性が実現できることです。これは、切り紙構造における伸縮性が材料の伸縮ではなく、薄いフィルムの三次元的な曲げによって生じているからです。そのため、伸縮に必要な力は弾性材料を用いた伸縮性デバイスと比較しても遥かに小さくなります。」と筆頭著者である博士後期課程の森川雄介は説明します。

 研究チームのリーダーである河野剛士准教授は「このアイデアは実は、朝起きたときに折り紙や切り紙をして遊んでいる息子を見てひらめきました。彼は高い伸縮性を持ったフィルムを、紙を使って実現していました。それを見て私は、切り紙のコンセプトを用いた伸縮性エレクトロニクスができるのではないかと考えました。驚いたことに、予備実験として行った、パリレンに微細パターンを施して製作した切り紙フィルムは1,100%という革新的な伸縮性を実現しました。また、次に製作した切り紙神経電極デバイスが、高い伸縮性と変形性といった特性を活かして、マウスの大脳皮質と拍動する心臓からの神経信号記録を実現したことにも驚かされました。

 研究チームは、切り紙神経電極が長期における成長や病気などによる組織や臓器の表面積ないしは体積の増加・減少を伴う状況でも適用可能であると考えています。最終的には、これまでにない新たな計測手法を実現し、成長やアルツハイマーに代表される脳の変形を伴うような病気についてのメカニズムの解明や治療に役立てていきたいとも考えています。

本研究は、文部科学省・日本学術振興会科学研究費基盤研究A(25249047)、基盤研究B(17H03250)、若手研究A(26709024)、科学技術振興機構さきがけ(PRESTO)、及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)次世代人工知能・ロボット中核技術開発の助成によって実施されたものです。また、筆頭著者の森川は文部科学省・日本学術振興会の実施する博士課程教育リーディングプログラム(R03)の支援を受けました。また共著者沼野は公益財団法人武田科学振興財団の支援を受けました。

Reference:

Yusuke Morikawa, Shota Yamagiwa, Hirohito Sawahata, Rika Numano, Kowa Koida, Makoto Ishida and Takeshi Kawano (2017). Ultrastretchable Kirigami bioprobes. Advanced Healthcare Materials, 10.1002/adhm.201701100.

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