Public Release: 

マウスの精子の受精能力を10日間維持する冷蔵技術

Kumamoto University

遺伝子改変マウスの国際輸送方法に技術革新のニュースです。熊本大学の研究チームが、マウス精子の受精機能を10日間維持する冷蔵保存技術の開発に成功しました。これまでマウス精子を冷蔵保存できる期間は3日間が限度でしたが、保存期間が3倍に延びたことで、世界中の研究機関へ遺伝子改変マウスの精子を送り出すことが可能になりました。

近年、大学や製薬企業では、ある特定の遺伝子を操作して人の病気を再現したマウス(遺伝子改変マウス)を用いて研究開発が行われています。遺伝子改変マウスは、薬の安全性を確かめたり、病気の原因を調べたりするのに有用なため、世界中の研究所や大学で遺伝子改変マウスの輸送が頻繁に行われています。遺伝子改変マウスの輸送は、生きたマウスを専用の容器で輸送するのが一般的です。しかし、輸送中のストレスによりマウスが死んでしまうことやアクシデントにより野外へ逃げ出してしまう等のリスクがあり、動物愛護や生態系維持の観点から望ましくありません。

熊本大学の生命資源研究・支援センター 資源開発分野は、遺伝子改変マウスを効率的に作製・保管・供給するための生殖工学技術を開発しており、その技術は世界中の研究機関で利用されています。この研究グループは、遺伝子改変マウスの生体輸送に替わる輸送方法として、「精子の冷蔵輸送法」の研究を進めてきました。冷蔵輸送した精子を用いて体外受精を行うことで、一度に大量の遺伝子解析マウスを作製することができます。すなわち、遺伝子改変マウスの精子を冷蔵輸送することで、生体輸送法が抱えている課題を全て解決することができるのです。

これまでに本法を用いて、日本の南にある熊本大学と北にある旭川医科大学間、および、熊本大学とカリフォルニア大学デービス校間において相互輸送試験を行いました。しかし、マウス精子を冷蔵保存できる期間は3日間が限度であり、それ以降は、精子の受精能力が低下してしまうことが課題でした。遺伝子改変マウスを世界中に輸送することを想定した場合、さらなる保存期間の延長が必要でした。

そこで、研究グループは精子の低温耐性を向上させる保存液の開発を目指し、寒冷植物に多く含有され抗酸化作用のあるケルセチンと、凍結保護物質として汎用されるジメチルスルホキシド(DMSO)を保存液に添加することを試みました。その結果、ケルセチンとDMSOは、冷蔵保存した精子の運動能力を飛躍的に向上させ、その受精能力を10日間維持可能にしました。さらに、体外受精によって得られた受精卵からは、正常なマウスの子どもが生まれました。また、ケルセチンとDMSOを処理した精子の機能を詳しく調べたところ、ミトコンドリアと呼ばれるエネルギーを産生する部位の活性が上昇していることが分かりました。そこで、蛍光顕微鏡で精子を観察した結果、ケルセチンが精子中片部 (精子のミトコンドリアが存在している部分)に蓄積していることが分かりました。また、ケルセチンは精子のミトコンドリアを保護している可能性が示唆されました。

研究を主導した竹尾徹講師は次のようにコメントしています。 「本研究によって、世界中の主要な研究機関に対して、安全かつ容易に遺伝子改変マウスを輸送することが可能になることで、国際共同研究を加速し医学・生命科学研究の発展に寄与することが期待できます。」

本研究成果は、アメリカの科学ジャーナル「Biology of Reproduction」にUS時間の11月8日(日本時間11月9日)掲載されました。

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[Source]
Yoshimoto, H., Takeo, T., & Nakagata, N. (2017). Dimethyl sulfoxide and quercetin prolong the survival, motility, and fertility of cold-stored mouse sperm for 10 days. Biology of Reproduction. doi:10.1093/biolre/iox144

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