Public Release: 

世界で最も微生物細胞に優しいバイオマス溶媒を開発 —次世代バイオエタノールの効率生産に道筋—

Kanazawa University

IMAGE

IMAGE: After dissolving plant biomass by the novel solvent, carboxylate-type liquid zwitterion, hydrolysis and fermentation were consecutively carried out in one reaction pot for conversion into ethanol. view more 

Credit: Kanazawa University

研究の背景

現在,実用化されている第1世代バイオエタノールは,トウモロコシなどの食物から作られているため,将来的な食糧不足などが懸念されています。そこで,雑草や古紙,割り箸などの植物バイオマス(※1)の主成分であるセルロースからエタノールを作ることが求められています(第2世代バイオエタノール)。この第2世代バイオエタノールの生産に必要な「バイオマスの溶媒」は微生物に対する毒性が強く,その毒性を除去するために溶媒を洗い流すための煩雑な工程(水での洗浄,遠心分離,圧搾)が必要となります。その結果,エタノールを作ることで得られるエネルギーよりもエタノールを作るための投入エネルギーが大きくなり,エネルギー収支がマイナスになる(エタノールを作れば作るほど環境に悪い)状況でした。また,セルロースのような強固な構造のものを溶かしながら,微生物を生かす(微生物を覆う脆弱な細胞膜を壊さない)ことは無理だとされていたため,そうした問題を解決することは不可能だと考えられてきました。

研究成果

今回の研究では,新しいバイオマス溶媒「カルボン酸系双性イオン液体 (※2)」を開発することで,セルロースを溶解しながら微生物への毒性を極限まで下げることに成功しました。大腸菌に対して致命的なダメージを与える時の濃度(EC50(※3))を調べた結果,カルボン酸系双性イオン液体では,158グラム毎リットル(g/L)でした(図2)。一方で,既知のセルロース溶媒であるイオン液体(※4)のEC50はわずか9 g/Lでした。このことから,カルボン酸系双性イオン液体は,イオン液体に比べて約17倍低い毒性を示すことが分かりました。

また,エタノール生産が可能な大腸菌を利用して,0.5モル毎リットル(mol/L)のカルボン酸系双性イオン液体中で大腸菌の発酵能力試験を行ったところ,ほぼ最大収率でエタノールが得られ,その濃度は21 g/Lとなりました(図3)。一方で,0.5 mol/Lのイオン液体中で同様の試験を行ったところ,わずか1 g/Lのエタノールしか得られませんでした。このことから,カルボン酸系双性イオン液体中では,イオン液体中に比べて21倍のエタノールが得られることが分かりました。

最後に,植物バイオマス(サトウキビの搾りかす)から,洗浄工程なしで連続的にエタノールの生産を行いました。その結果,カルボン酸系双性イオン液体を使った場合のエタノール濃度は1.4 g/Lであったのに対し,イオン液体を使った場合は毒性が高く,全くエタノールが得られませんでした(図4)。

これらのことから,カルボン酸系双性イオン液体を利用することで,洗浄工程を無くし,植物バイオマスを連続的に同一容器内でエタノールに変換できることが示されました。これにより,エタノール生産にかかる投入エネルギーを大きく減少させることができ,第2世代バイオエタノールを生産・利用するための大きな一歩を踏み出すことができました。

社会的意義・今後の展開

第1世代・第2世代バイオエタノールのほかに,藻類中に含まれるオイルなどを指す第3世代バイオ燃料があります。第3世代バイオ燃料を作るために藻類からオイルを取り出す時にも,セルロースなどの多糖類を溶解する必要があります。本研究の第2世代バイオエタノールのように,その溶解したセルロースを同時にエタノールへ変換することができれば,エネルギー生産効率が一気に向上します。このように,本研究を発展させることにより,第2世代バイオエタノールの生産のみならず,第3世代バイオ燃料の生産にも大きく貢献することが期待されます。 また,今回開発したカルボン酸系双性イオン液体そのもののユニークな性質に注目が集まっており,米国のラトガース大学のエドワード・カストナー教授など海外から共同研究のオファーを受け,現在3件が進行中です。

###

用語解説

※1 植物バイオマス

草や木など植物そのもの,あるいは古紙や割り箸などの植物由来のものすべて。再生可能な資源として注目されている。

※2 カルボン酸系双性イオン液体

今回新たに開発した,バイオマス(セルロース)を溶解し,微生物への毒性が低い溶媒。イオン液体との違いは,正電荷と負電荷が共有結合で結ばれていることである。双性イオン液体の報告自体は世界で2報目であるが,カルボン酸アニオンを持つ双性イオン液体の報告は世界で初めてである。

※3 EC50

大腸菌などの微生物の成長が大きく阻害される濃度と今回は定義した。セルロース溶媒をさまざまな濃度で添加し,大腸菌の成長が半分となった時の濃度としている。

※4 イオン液体

100 ºC以下で液体になる塩。さまざまな正電荷と負電荷の組み合わせからなり,バイオマスやセルロースを効率的に溶解できることが知られている。

Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.