Public Release: 

植物の重要な機能を担う「ペプチドホルモン」の解明に役立つ遺伝研究材料コレクションを作成

Kumamoto University

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IMAGE: 1. Construction of gene targeting vectors 2. Plant transformation 3. First generation plant selection 4. Gene disruption efficiency evaluation 5. Onset of genome editing events 6. Selection of plants that lost gene disruption tools (preventing... view more 

Credit: Assistant Professor Takashi Ishida

ペプチドホルモンは多くの生物で様々な役割を持つ重要な物質です。しかし、このペプチドホルモンを作る遺伝子は非常に扱いにくく、研究が難しい代表的な遺伝子でした。今回、研究者らは、ゲノム編集技術を用いて、ペプチドホルモンの一種である「CLEペプチド」を網羅的に破壊した遺伝資源コレクションを作成しました。今後、このコレクションはペプチドホルモンが植物の生体内でどのように働いているかを研究するために役立つことが見込まれます。

ペプチドホルモンは多くの生物で様々な役割を持つ重要な物質です。しかし、このペプチドホルモンを作る遺伝子は非常に扱いにくいため、研究が難しい代表的な遺伝子でした。

今回、熊本大学の研究グループは、ゲノム編集技術を用いて、ペプチドホルモンの一種である「CLEペプチド」を網羅的に破壊した遺伝資源コレクションを作成しました。さらに、このコレクションを用いて一つの未知の遺伝子の機能を明らかにしました。今後、このコレクションはペプチドホルモンが植物の生体内でどのように働いているかを研究するために役立つことが見込まれます。そのために世界中の研究者に向けてコレクションを公開する予定で、世界中で植物のペプチドホルモン研究が大きく加速することが期待されます。

近年、ゲノム編集と呼ばれる、特定の遺伝子を狙って破壊や書き換えを行う技術が注目を浴びています。その中でも、CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)という手法は2013年に確立されて以来、動物や酵母、植物と多くの生物種で成功例が報告されるようになってきています。以前からゲノム編集に使われてきた手法には手順が複雑なものが多く、多数の遺伝子を対象とした研究にはあまり向いていませんでした。しかし、CRISPR/Cas9は比較的簡単な手順で狙った遺伝子を破壊できるという大きなメリットがあります。この特性により、これまでは扱うことが難しかった遺伝子を破壊することで、生物個体や細胞にどのような影響が表れるのかといった研究を行うことができるようになってきました。

近年の植物科学研究の発展により、ペプチドホルモンは細胞の数や組織の大きさの決定、受粉の制御、気候変動への応答、害虫や病気への対応など、非常に多くの場面で働いていることが明らかとなってきました。植物のゲノムにはまだ多くの機能未知なペプチドホルモンが眠っていると考えられており、多くの研究者がこういった遺伝子の研究に挑んでいます。しかし、このペプチドホルモンを作る遺伝子は非常に取り扱いが難しい代表的な遺伝子であり、今後の研究の発展のためにも更なる遺伝資源(研究材料)の充実が期待されていました。

このような背景を踏まえ、熊本大学の研究グループは発展著しいCRISPR/Cas9を活用すればペプチドホルモン研究を加速できるのではないかと考えました。植物研究のモデル植物であるシロイヌナズナには、ペプチドホルモンの一種である「CLEペプチド」を作る遺伝子が32種類存在します。これらの遺伝子を標的に1対1で対応する遺伝子破壊ツールを作成して植物に導入し、遺伝子破壊系統を確立しました。この遺伝子破壊系統から育てたシロイヌナズナ(突然変異体)は、それぞれ32種類の遺伝子が破壊されているため、1つ1つの遺伝子の機能を調べることが可能です。

続けて、研究グループは作成した突然変異体の観察を行い、実際に遺伝子破壊を行ったことによる影響を調査しました。CLEペプチドの1つであるCLV3は、双子葉植物の双葉の間にある成長点の細胞の数を抑制的にコントロールする役割を持つことが知られています。本研究で作成されたCLV3遺伝子が破壊されたシロイヌナズナでは、予想通りに細胞の数が大幅に増加し、果実の形がいびつになることを観察しました。

さらに、今回作成した突然変異体を用いて、CLE44遺伝子の機能をはじめて明らかにしました。CLE44は維管束を構成する細胞の数をコントロールすると予想されていましたが、実証的な研究は行われていませんでした。今回作成した突然変異体を観察したところ、実際に維管束細胞が減少していることが確認できました。これにより、CLE44が本当に維管束を制御する役割を持つことが示されました。

研究を主導した熊本大学の石田助教は次のようにコメントしています。

「今回の成果からは、CLE44だけにとどまらず、私たちが作成した遺伝資源コレクションが未知のペプチドホルモンの研究に役立つ可能性を示唆しているということができます。今回の研究法が今後のペプチドホルモン研究のモデルケースとなることが期待されます。」

本研究成果は科学雑誌「Plant and Cell physiology」に2017年9月25日掲載されました。また、

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[Source]

Yamaguchi, Y. L., Ishida, T., Yoshimura, M., Imamura, Y., Shimaoka, C., & Sawa, S. (2017). A collection of mutants for CLE-peptide-encoding genes in Arabidopsis generated by CRISPR/Cas9 mediated gene targeting. Plant and Cell Physiology. doi:10.1093/pcp/pcx139

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