Public Release: 

インドネシアにおける無症候ノロウイルス感染者の分子疫学解析

—多数の不顕性感染者の証明—

Kobe University

神戸大学大学院医学研究科附属感染症センターの勝二郁夫教授、内海孝子特命講師と国立感染症研究所の片山和彦室長(現、北里生命科学研究所教授)らの研究グループが、インドネシアの健康なボランティア(無症候者)の便中から高率にノロウイルスが検出されることを分子疫学的に証明しました。この結果は無症候感染者がノロウイルス感染症の発生源となることを示唆しており、ノロウイルス感染症の伝播様式の解明につながる成果です。

本研究成果は、2017年8月24日に、国際科学誌「Infection, Genetics and Evolution」にオンライン公開されました。

なお、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)による支援の下、アイルランガ大学熱帯病研究所内に設立したインドネシア神戸大学国際共同研究拠点で行いました。

【ポイント】

・ノロウイルス感染症の伝播には無症候感染者の存在が感染源として重要と推測されていますが、実態は不明です。 ・ノロウイルス感染症の伝播様式を明らかにするために、2015-2016年の1年間、インドネシアにおいて無症候者18人から糞便検体を継続的に収集したところ、512検体中14検体(7人の無症候者)からノロウイルスゲノムが検出されました。 ・異なる遺伝子型同士の組換えノロウイルスも検出されました。 ・無症候者から高率にノロウイルスが検出されることを分子疫学的に証明しました。

【研究の背景】

ノロウイルス※1感染症は、非細菌性急性胃腸炎の最大の原因病原体です。ノロウイルス感染症の伝播には、無症候感染者※2の存在が重要と推測されていますが、詳細はよく分かっていません。インドネシアにおけるノロウイルス感染症は疫学情報自体が乏しいのですが、インドネシアと我が国は地理的にも近く、古くから交流が盛んであることから、感染症の伝播経路としてきわめて重要です。ヒトのノロウイルスは、ヒトに感染すると腸管で増殖することが知られており、無症候感染者から小児や高齢者に感染が伝播することで、ノロウイルス感染症の流行が始まると推測されていますが、その実態は不明な点が多いです。また、我が国では冬季にノロウイルス感染症が流行しますが、亜熱帯気候のインドネシアでは感染流行の実態がほとんど調べられていませんでした。

【研究の内容】

 我々はインドネシア国スラバヤ市の健康なボランティアから継続的に糞便検体を収集し、便中に存在するノロウイルスゲノムの疫学解析を行いました。2015-2016年の1年間に18人の健康なボランティア(無症候者)から512検体を収集しました。糞便検体からRT-PCR法にてノロウイルスゲノムを増幅し、シークエンス解析を行った結果、512検体中14検体(2.7%)がノロウイルス陽性であり、すべてが遺伝子型GIIでした。陽性の14検体について分子系統樹解析を行った結果、10検体(71.4%)がGII.2、2検体(14.3%)がGII.17、1検体(7.1%)がGII4 Sydney2012、1検体(7.1%)がGII.1と呼ばれる株でした。さらに詳細に解析したところ、GII.Pg/GII.1とGII.Pe/GII.4 Sydney2012という違う株同士の組換えノロウイルスが検出されました。また、7人の無症候者のうち、2人において、同じ株あるいは違う株による反復した感染が認められました。以上の結果から、無症候者に高率にノロウイルスが感染していることが明らかになり、インドネシアのノロウイルス感染流行に無症候者が感染源として重要であることが示唆されました。

【今後の展開】

今後はノロウイルス無症候者の家族内伝播例などを詳細に解析することにより、ノロウイルス感染症の無症候感染者から有症状感染への転換に重要なウイルス因子、宿主因子が何であるかを同定する予定です。

また、亜熱帯気候のインドネシアにおけるノロウイルス感染の伝播様式や、流行株の分子系統樹を解析し、我が国でのノロウイルス感染症への影響を明らかにする予定です。

###

【用語解説】

※1 ノロウイルス: プラス1本鎖RNAウイルスでカリシウイルス科、ノロウイルス属に分類されます。非細菌性急性胃腸炎の原因となります。 ※2 無症候感染者: 病原体による感染が起こっていながら、明瞭な症状が顕在化しない人のことで、感染症伝播に深く関与している可能性があります。

Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.