Public Release: 

アルマ望遠鏡、遠方銀河団で進む星の少子化の原因をとらえた

National Institutes of Natural Sciences

IMAGE

IMAGE: アルマ望遠鏡が見つけたガスに富む銀河を赤色で表示し、さらに白丸で囲んでいます。これらの銀河が、銀河団の中心部(画像中央部)には存在しないことがわかります。 view more 

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Hayashi et al., the NASA/ESA Hubble Space Telescope

宇宙には、何千億もの星と大量のガスや塵を含む銀河が数多く存在しています。この銀河がどのようにして生まれ、どのように進化してきたのかを明らかにすることは、現代天文学のホットなテーマの一つです。

これまでの研究から、銀河の中で星が作られるペースが138億年の宇宙の歴史の中で大きく変動していることがわかってきました。今から宇宙誕生後20億年ごろから60億年ごろまでの期間(現在から見ておよそ120億年前から80億年前までの期間)は銀河の中で非常に活発に星が作られていたのに対して、それから現在に至るまで星形成活動は低下の一途をたどっているのです。いわば、星のベビーブームが過ぎ去って少子化が進んでいるようなものです。しかし、どのようなメカニズムで星の少子化が進んでいるのかは、まだ明らかになっていません。

また、周囲の環境が銀河の進化にどのような影響を及ぼすのか、という謎も残されています。たとえば、銀河が集団で存在する「銀河団」の中には、巨大な楕円銀河が銀河団以外の場所と比較して高い割合で存在しています。楕円銀河は新しい星がほとんど作られなくなった銀河であり、「星の少子化」が進んだ銀河の最終形態の一つといえます。銀河団に楕円銀河が多く存在する理由の一つとして考えられるのは、銀河団という環境が個々の銀河に影響を及ぼしている、ということです。しかし、具体的にどのようなメカニズムで影響を受けているのかは未解明です。

この謎を解く手がかりは、遠方にある銀河団に含まれる銀河にあります。銀河には、星の他にも大量のガスが含まれています。遠方の銀河団、つまり古い時代の銀河団銀河に含まれるガスの量や密度が、現在の銀河団銀河とどのように異なっているのか、何が原因で変化するのかを理解できれば、銀河進化のメカニズムを解き明かせるかもしれません。

アルマ望遠鏡での観測

国立天文台の林将央 特任助教と東北大学大学院理学研究科の児玉忠恭教授、東京大学大学院理学系研究科の河野孝太郎教授を中心とする研究チームは、銀河進化の謎に挑むため、アルマ望遠鏡を使って地球から94億光年 [1] の距離にある銀河団XMMXCS J2215.9–1738を観測しました。研究チームはこの銀河団を過去に国立天文台すばる望遠鏡で観測しており、この銀河団に含まれる多くの銀河で活発に星が作られていることを明らかにしていました。地球から観測しているのはこの銀河団の94億年前の姿であることを考えると、宇宙全体で星のベビーブームが起きている時代にある銀河といえます。一方で、私たちが住む天の川銀河の近くにある銀河団、つまり現在の銀河団では、星形成活動をしていない銀河が大多数です。

観測チームが狙ったのは、この銀河団の銀河に含まれる一酸化炭素分子が放つ電波でした。星間ガスの大部分は水素ですが、わずかに含まれる一酸化炭素分子は電波を強く放射するため、星間ガスの存在を確かめたり総量を見積もったりする場合によく観測対象になります。「星形成活動がどのようなメカニズムによって抑制されているのかを調べるために、私たちは銀河がいる環境による影響に注目しました。」と林氏は語っています。

アルマ望遠鏡による観測の結果、この銀河団に含まれる銀河のうち17個で、一酸化炭素ガスからの電波を検出しました。星のベビーブームが起きている時代の銀河団で、ガスを豊富に含む銀河がこれほどたくさん一度に発見されたのは、これが初めてのことです。

さらに今回の観測で、ガスが豊富な銀河が銀河団の中心部にほとんど無く、それよりも外側に多く分布していることが明らかになりました。約100億光年の距離にある銀河団で、こうした分布の違いをはっきりと明らかにしたのも今回の研究が初めてです。これは、ガスが豊富な銀河が、よりあとの時代になってこの銀河団に加わったことを示唆しています。

では、この違いは何を意味しているのでしょうか?研究チームが今回の観測結果から予想するシナリオは、次のようなものです。

銀河団は、時代が下るにつれてより多くの銀河が重力によって引き寄せられ、大きくなっていきます。ガスが豊富な銀河は、もともと銀河団の外にありましたが、強大な重力に引かれて銀河団に引きずり込まれました。銀河団は高温のガスに包まれているため、この中を移動する銀河は高温ガスの圧力を受けます。この時、銀河にもともと含まれていたガスが銀河団の高温ガスに押されて、銀河から剥ぎ取られてしまいます。銀河に残ったガスも、活発な星形成活動によって消費されてしまうでしょう。また、銀河への新たなガスの供給も起きていないと考えられます。こうして星の材料であるガスがなくなり、最終的に星形成活動が止まってしまうのです。現代の銀河団において、星形成活動を起こしていない楕円銀河が多数存在することは、このシナリオに合致するものです。

アルマ望遠鏡で検出されたガスが豊富な銀河は、まさにこの過程の途上にあると研究チームは考えています。星形成が活発であると確かめられた銀河団中心部の銀河も、残り少ないガスを消費して星を作りだしているのだと考えられます。

「銀河進化を理解する上で、ガスの分布を知ることが不可欠であるということが近年理論的にも観測的にも示されてきました。今回の観測で、銀河団中心から外れた領域にガスを豊富に含む銀河がたくさん存在するという事実を、十分な検出数をもって初めて示すことができました。今後、銀河団に含まれる銀河の進化を明らかにしていく道筋を示すことができたといえます。」と林氏は今回の研究の意義をまとめています。

論文・研究チーム

この研究成果は、Hayashi et al. “Evolutionary Phases of Gas-rich Galaxies in a Galaxy Cluster at z = 1.46” として、アメリカの天文学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に2017年5月に掲載されました。

この研究を行った研究チームのメンバーは、以下の通りです。

林将央(国立天文台)、児玉忠恭(国立天文台/総合研究大学院大学、現 東北大学)、河野孝太郎(東京大学)、山口裕貴(東京大学)、但木謙一(国立天文台/マックスプランク地球外物理学研究所)、廿日出文洋(東京大学)、小山佑世(国立天文台/総合研究大学院大学)、嶋川里澄(カリフォルニア大学/国立天文台)、田村陽一(東京大学、現 名古屋大学)、鈴木智子(国立天文台)

アルマ望遠鏡

アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA, “アルマ望遠鏡”)は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設です。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾行政院国家科学委員会(NSC)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宙科学研究院(KASI)によって分担されます。 アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同ALMA観測所(JAO)は、ALMAの建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。

[1] 今回の天体の赤方偏移は、z=1.46でした。これをもとに最新の宇宙論パラメータ(H0=67.3km/s/Mpc, Ωm=0.315, Λ=0.685: Planck 2013 Results)で距離を計算すると、94億光年となります。距離の計算について、詳しくは「遠い天体の距離について」もご覧ください。

###

Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.