探査機カッシーニは探査の最終段階で、土星と最も内側の環との間に何度も飛び込んだ。その際に得られたデータを用いて、「太陽系の宝石」と呼ばれる土星の重力場について新たな測定結果の報告がなされた。それによると、土星の内部構造や風の深度、そしておそらく最も注目すべきことに環の年齢が解明できたという。これまで環は初期の太陽系において土星と一緒に形成されたと考えられてきたが、今回の結果からそうではないことが示唆された。もっと正確に言えば、環のほうがかなり若いという。ミッションの最終段階「グランドフィナーレ」に入る前、カッシーニは常に土星のA環の外側を周回していた。つまり、環の重力による影響と土星の重力による影響とを分離することができず、質量と直接関係があると理論化されている環の年齢を確定するのは難しかった。しかしミッションの最終段階で、カッシーニは土星と最も内側の環との間に飛び込んだ。こうした環くぐりを6回実施する間に、地球との無線回線を監視して土星の重力場が測定された。探査機の無線信号に見られる微小なドップラー偏移を利用して、Luciano Iessらは理論予想とは異なる、より正確で新しい土星の重力信号について報告している。Iessらによると、この信号は巨大ガス惑星である土星のいわゆる差動回転(固体表面をもたない土星の各部分が、深度によって異なる速度で自転すること)によって説明できるという。土星表面の自転速度は深い内部よりも著しく速いことが、著者らの研究結果から示されている。さらに、土星の帯状風は少なくとも9000キロメートルの深さまで続いていると、Iessの研究チームは述べている。また研究者らはカッシーニで得られた重力データを用いて、土星の主要な環であるB環の重力信号を見つけた ―― つまり、質量を突き止めた。今回報告されたB環の質量がこれまでの研究結果よりも小さかったことから、土星の環ができたのはわずか1000万~1億年前であり、土星本体よるもはるかに若いことが示唆された。このデータからは、環系がこれほど最近にどうやって形成されたのかはわからないという。
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