東京大学 生産技術研究所の川添 善行 准教授らがインドの専門家と協力し、インド工科大学ハイデラバード校(IITH)の素晴らしい新キャンパスを実現しました。
2007年に当時の安倍 晋三 首相がインドを訪問した際、日本政府はハイデラバードにあるインド工科大学(IIT)の新キャンパスの設計についてインドを支援すると発表しました。東大生研の専門家が2011年から設計に着手し、今年ようやく完成しました。
新しいインド工科大学ハイデラバード校(IITH)は、インド南部のハイデラバード市から約60キロ離れた約2平方キロメートルのキャンパスにあります。完成した6つの構造物は、国際交流会館、学生会館、国際会議場、ビジネス・インキュベーションセンター、総合研究センター、そして中央図書館です。
中央図書館の設計に携わった川添 善行 准教授は、「中央図書館の仕事は特に面白かった」と言います。「このセンターは、図書館としてだけでなく、あらゆる知識の貯蔵庫として機能することを意図しています。そこで、谷のような空間を作ろうと考えました。低層階の構造を調整することで、中央に向かうにつれて床の高さが低くなるような空間をつくりました。こうすることで、来館者はこのビルに収められたさまざまな知識の形を一望できるのです」。
ビジネス・インキュベーションセンターは好評で、同じデザインの建物が2棟建設されました。ビジネス・インキュベーションセンターは、大学での研究を基にしたスタートアップ企業を支援し、学術界と産業界の橋渡しをすることを目的としています。自動車メーカーのスズキは現在、産学連携を促進するためにこのセンターにラボを設置しています。
設計作業は日本で行われましたが、関係する専門家は何度もIITHを訪れ、状況を把握し、進捗状況を確認しました。「日本とはまったく異なるインドの建設文化に適応することが、私たちにとって課題のひとつでした」と川添准教授は指摘します。「例えば、日本では木材が重要な建築材料ですが、インドでは木材が不足しています。つまり、木材の代わりに石材に頼るというアプローチに変更しなければなりませんでした。同時に、建築スタイルに日本的な要素を取り入れることにも成功したと思います」。
IITHの新キャンパスは、川添准教授らの協力のもと、世界トップクラスの科学技術教育の拠点となる予定です。さらに、IITHと日本の産業技術総合研究所(産総研)とのAI研究の提携など、日印間の学術交流のためのさまざまな取り組みがすでにキャンパス内で進行中です。
「インド有数の大学がこのような素晴らしいキャンパスを建設する手助けができたことを誇りに思います。私たちはさらなる交流への道を切り開きましたが、その一部はすでに進行中であり、インドと日本の関係は今後50年間でさらに強固なものになると確信しています。
IITHキャンパスの設計に携わったことで、建築と気候、建材、社会との密接な関係を理解することができました。この関係は場所によって異なるため、美しい空間を作るためのアプローチも変わってくる。この考え方は、私の今後の活動にとって大きなインスピレーションとなるでしょう。世界各地で仕事をすればするほど、建築の奥深さを実感し、建築への興味は増すばかりです」と川添准教授は締めくくりました。